母乳育児は体と脳の発達に効果あり!母乳の5つの効果と良い母乳を出すポイント

赤ちゃんは自分で食事を摂ることができないため、母乳かミルクかをあげなければなりません。

そして、赤ちゃんを育てるにあたって母乳にすべきかミルクにすべきかは議論を巻き起こしがちですが、最近の研究ではやはり母乳育児が良いとする専門家の意見がほとんど一致しています。

アメリカの小児科学会(AAP)では、最低でも生後6か月までは母乳のみで育てるように推奨しています。

では、母乳育児のどのような点が良いのか?母乳には赤ちゃんにとってどういうメリットがあるのか?良い母乳を出すにあたって注意すべき点は?今回は、母乳について徹底解説します。

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母乳は栄養たっぷり

母乳の元になっているのは、ママの血液です。乳房にある乳腺葉(にゅうせんよう)という組織に血液中の栄養分が取り込まれ、白い母乳に作り替えられて、乳頭部に送り出されます。

ママの体内で作られる母乳には、赤ちゃんが成長するにあたって必要な栄養がたっぷり含まれています。WHO(世界保健機関)によると母乳は15グラムもあれば1日~2日分の栄養がまかなえるそうです。栄養バランスや消化・吸収に優れています。そのため、赤ちゃんの消化器官にも負担を掛けません。

具体的には、以下のような栄養素が含まれています。

たんぱく質

母乳には、赤ちゃんが消化吸収しやすく栄養価の高い、乳清(ホエイ)というたんぱく質が豊富に含まれています。

また、カナダのトロント大学の研究によると、母乳中に「CD14」と呼ばれる特殊なたんぱく質が多く含まれており、それが免疫システムのなかで抗体をつくる働きのあるB細胞を多様化させるように刺激することが報告されています。

脂肪

脂肪は赤ちゃんにとってエネルギー源になる大変重要な栄養素です。

面白いことに、母乳は飲み始めと飲み終わりでこの脂肪分がどんどん変わっていきます。飲み始めは薄いのですが、徐々に脂肪分が多くなっていき、飲み終わりは3~5倍程度になると言われています。

ミネラル

ミネラルには、骨の形成に欠かせないカルシウムや、心臓や筋肉の機能調整に必要なカリウムなど、これも赤ちゃんの成長には欠かせない成分です。

アミノ酸

アミノ酸も赤ちゃんの成長に必須の栄養素です。また、アミノ酸は体内で生成することができないため、母乳で摂取することが大切です。

ビタミン

母乳には身体を健康に保つための栄養素がバランスよく含まれています。

オリゴ糖

オリゴ糖は腸内環境を整え、便通を良くする働きがあります。

免疫力を高め、感染症や肥満リスクを軽減

母乳には、病気になりにくくする免疫物質も含まれています。具体的には、免疫機能を高めて消化を促す免疫グロブリン、ラクトフェリン、リゾチーム、オリゴ糖といった「感染防御因子」というものが豊富に含まれています。特に出産後から1週間くらいの間に出る「初乳」には、多く含まれています。

この感染防御因子は、様々な感染症の予防に役立っています。胃腸や耳、気管支などの感染を防ぎます。

例えば、母乳で育った赤ちゃんはそうでない赤ちゃんに比べて、生後6カ月までで上気道感染症の発症リスクが63%低減していたというオランダの研究が発表されています。

また、驚くべきことに、母乳を出す乳腺にある受容体は、赤ちゃんが母乳を飲むときに赤ちゃんの唾液から赤ちゃんの状態を読み取って、赤ちゃんの状態に合わせて母乳の成分を変える機能が備わっていることが分かっています。つまり、赤ちゃんに合わせて母乳の成分をオーダーメードできる機能があるのです。

この機能のおかげで、赤ちゃんは免疫力をより高めることができるのです。

さらに、母乳は肥満のリスクを下げることができます。WHO(世界保健機関)の発表によると、母乳母乳で育った子どもはそうでない子供と比べて、肥満になる確率が22パーセントも低くなるとしています。

中耳炎や下痢、呼吸器疾患、アレルギーなどが発症する確率も低いそうです。これは、母乳に含まれる栄養素が影響しているためです。

母乳は赤ちゃんだけでなくママにも良い

母乳を飲ませることは、飲んでいる赤ちゃんだけでなくママにとってもよいとも言われています。

母乳を飲んだ子供はそうでない子供と比べて糖尿病のリスクが下がると言われていますが、妊娠糖尿病だったママも糖尿病の進行を抑えることができるという研究が発表されています。

また、2009年の報告によると、授乳が乳がんの発症リスクの減少にもつながるそうです。これは、授乳期間が長くなるほど乳がん発症リスクが減少すると言われています。

さらに、出産してすぐ母乳育児を開始することは、ママの身体の回復も助けます。赤ちゃんが乳頭を吸うことで、子宮の収縮を促し、分娩後の出血を止める作用があると言われています。赤ちゃんに母乳を吸われてカロリーが消費されることから、ママの体型も戻りが早いようです。

母子が触れ合うことにより絆も深まる

これは母乳の効果ではなく、ママの乳首や乳房に赤ちゃんが触れることにより、ママの血液中に「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンという物質が増えるという発表もされています。

オキシトシンは、子育ての意欲を高め、身近な相手への愛着や記憶を強めるのに役立ちます。

また、赤ちゃん自身も乳首をしゃぶると、身体の中でもオキシトシンが増えることが発見されています。赤ちゃんはママのぬくもりや、柔らかい乳首の感触を感じることによって安心感を得ていきます。

まさに、母乳を与える行為が母子の絆を深めることになるのです。

母乳は脳の発達に効果的

母乳は体にも良いことは知られていましたが、脳にとっても非常に重要であることが最近の研究で明らかになってきています。

例えば、生後28日間に母乳を多く与えられてきた子供は、そうでないこともに比べて、7歳児の脳の様々な部位で灰白質の量が多かったという論文が発表されています。灰白質とは神経細胞(ニューロン)の細胞体が存在している部位であり、認知や情報処理にかかわる部分です。

同論文では、早産で生まれた約200人の赤ちゃんの脳を出生直後からMRIで検査しつづけたそうです。また、上述の7歳児はIQや記憶力、計算能力、運動能力でも高得点を記録したそうです。

2013年に行われた調査では、同じく母乳を多く与えられた子供は、そうでない子供に比べて白質が20~30%多くなったと報告されています。白質は中枢神経組織の中で主に神経線維が集積し走行している領域で、脳と身体の伝達機能を担う部分です。

少し古くなりますが2010年で行われた調査でも、母乳の量が多かった乳幼児の方がIQが高く脳がより大きいとの報告がされています。

赤ちゃんは、母乳を吸うとき、乳輪ごとくわえ込み、上あごと下の間に乳頭を引き込み、下を上手に使って顎(あご)を上下運動させます。この顎の上下運動は赤ちゃんの顎の発育を高め、脳の発達を促すと言われています。

このように、母乳は脳の発達にも良い影響を与えるのです。

母乳が出ないときはためらわずに粉ミルクも与えよう

これまで解説してきたように、母乳は赤ちゃんにとって数々のメリットがあることが分かっています。特に祖父母世代では、粉ミルクなんてとんでもない、という人もいるでしょう。

しかし、なかなか母乳が出なかったり、ママ自身が体調が悪かったりすることもあります。特に最初はママの母乳の出も少なめで、赤ちゃんも上手に飲めないことがあります。

まずは赤ちゃんに吸わせることが大切で、母乳は吸われることによって分泌量が増えてきます。これは、乳首を吸われることによりママの脳下垂体からプロラクチンと、上述のオキシトシンという母乳を作るホルモンの分泌が進むためです。また、赤ちゃんも次第に上手に吸えるようになってきます。

しかし、母乳が全く出ないといったときは、ためらわずに粉ミルクをあげましょう。

ミルクを上げなかったために入院する赤ちゃんも

母乳至上主義になってしまうと、どうしても粉ミルクを上げることをためらいがちです。しかし、それが赤ちゃんにとって悪い影響を及ぼすことがあります。

アメリカの母親支援の「授乳が一番」というNPO団体によると、完全母乳で育った10%から25%の赤ちゃんが生後数日で体重が過度に減少し、20%近くが飢餓性黄疸、10%が低血糖症になったそうです。また、時には脱水症状になることもあります。

その結果、入院することになったり、言語機能障害や神経発達障害との関連も報告されています。

そのため、母乳育児にこだわりすぎず、赤ちゃんの体重を毎日測定して過度な体重減少が発生していないか確認するなどの工夫が必要です。

何より、粉ミルクを使うことに罪悪感を抱かないことが大切でしょう。中には母乳が出ないとママ失格とまで思われて追い詰められてしまうママもいるようですが、全くそんなことありません。

現在のミルクは栄養成分の面で限りなく母乳に近づいています。作り方や分量を守って、衛生面に気をつければ問題ありません。

母乳で育てることは大切ではありますが、赤ちゃんの様子を見ながら時には粉ミルクを与えることも考えましょう。

質の高い母乳にはママの食生活が重要

質の高い母乳を作るためには、ママの食生活が重要になってきます。体内で母乳を作り出すため、授乳中のママは一般女性と比較して450kcal多くエネルギーを摂取しないといけないと言われています。

また、エネルギーだけでなくタンパク質やカルシウム、鉄分の摂取を意識し、バランスの良い食事が求められます。甘いものや資質が多いものは乳管(母乳の通り道)を詰まらせる原因となるので控えましょう。

さらに、赤ちゃんに母乳を吸われるため、ママは水分不足に陥りがちです。そのため、水分摂取には気をつけましょう。

言うまでもなく、母乳はママが摂取した成分が出ることになるので、飲酒や喫煙は避けましょう。薬を飲んでいる場合はかかりつけのお医者さんに相談するとよいでしょう。

授乳中に控えるべきこと

  • 飲酒(アルコールの摂取)
  • 喫煙
  • カフェインの多飲(1日1~2杯程度に抑える)
  • 糖分・油の多い食べ物、牛乳や乳製品の摂りすぎ
  • 水分不足
  • ストレス過多・睡眠不足
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