日本では、伝統的に出産するとお湯につける「産湯」というものがあります。昔は子供の健康を祈るという意味も込められていたようですが、現代の事情はどうなのでしょうか?
そこで今回は、産湯とは何か?そして、医学的に産湯に付けるべきなのか?など、解説したいと思います。
穢れ(けがれ)をとるという意味で産湯につけていた
昔は日本では、出産は血や死を連想させるため、赤ちゃんは穢れをもって生まれてくると考えられていました。そのため、その穢れをとるために産湯というお湯をかけ流し、体を清めるという意味を持っていました。
また、出産直後に浴びるお湯のことも産湯と言いますが、実際は生まれて3日後に行われる儀式でした。産土神(うぶすながみ)が守る土地の水で赤ちゃんを清めることにより神様の産子(うぶこ)になり、丈夫に育つように祈る儀式です。
産湯にはいろいろな種類がありますが、すべて共通していることは子供の健康を願っていること。地方によっては、産湯に塩や酒、米のとぎ汁、漆の椀などをいれることで、風邪をひかなくなると信じられていたところもあるようです。
歴史上の人物が産湯に使ったと言われる井戸が、全国各所にあります。中には、その井戸水を飲むと安産になる、母乳が良く出るようになるといった言い伝えのある井戸もあるようです。
日本では出産後すぐに産湯につけるが、欧米ではつけないのが一般的
これまでに解説したのは産湯の古くからの伝統ですが、現代でも日本では出産後すぐに産湯につける病院が多いようです。
これは、産湯につけてあげることで出産時の身体についた汚れを洗い流したり、赤ちゃんの体を暖めるという目的から行っているそうです。
しかし、欧米では産湯にすぐにつけるのは一般的ではありません。出産後は体を濡れたタオルで軽くぬぐう程度でお湯にはつけず、汚れを取った後は柔らかいタオルに赤ちゃんをくるむのが一般的だそうです。
これを、ドライテクニックと呼んでいます。
産湯は体力の低下や肌を痛める可能性がある
実は、日本でも徐々に産湯につけず、欧米と同様タオルで軽くぬぐう程度で済ます病院が増えてきているそうです。これは、産湯につけることを簡略化したいというのではなく、医学的な考えからです。
赤ちゃんには皮膚に脂質がついていて、この脂質は皮膚を守る大切な役割があります。そのため、お湯をかけるとこの脂質が取られてしまい、肌を痛めたり皮膚にダメージを与える原因になりかねないそうです。
また、お風呂に入るというのは実はけっこう体力を使うものです。そのため、産湯に入れてしまうとエネルギーが消費されてしまい、体温低下などで免疫力低下につながってしまうこともあります。
お湯をつけると体が温まりそうな気がするのに、体の冷えに繋がるということなのです。
ですので、日本ではこのドライテクニックが今後さらに広まっていくものと思われます。